Newcomer/Showcase#2
モノクロームサーカス振付作品
『怪物』『きざはし』に寄せて
2006年から多くのダンサーによって踊られてきた2作品。
過去の出演ダンサーの方々から、今回の国内ダンス留学8期の公演に寄せた言葉をいただきました。
斉藤綾子さんより
（2022年2月 『怪物』出演）
わたしは今回初めて『怪物』を前から観ます。何も知らないまま2年弱の期間を怪物と一緒に過ごし、今年の2月に4回の『怪物』を上演しました。あれから少し経ちましたが、わたしにとって怪物はずっと、今の話です。
上演が始まると、怪物は張りつけられ繋がれ、暗闇から一気に光の個室に入れられます。そうなると、さっきまで「ああしようこうしよう」なんて考えていたのと同じわたしがやるのに、「さあ何を観せてくれるんですか？」などと思います。観てる人みたい。わたしなのに。
怪物との日々で、何度も自分の体と意識に対して他人みたいな期待をして、良くも悪くも裏切られてきました。もうすぐくる『怪物』では、わたしがわたしにしたように思いっきり期待をして暗闇側に座ります。裏切られるのを楽しみにしています。
斉藤綾子/Ayako Saitoh
1990年大阪府生まれ。幼い頃から踊りに親しむ。大阪芸術大学舞台芸術学科舞踊コース卒業。2016年よりダンスユニット ...1[アマリイチ] での活動を始める。近年では、サイトウマコト、今中友子、きたまり/KIKIKIKIKIKI、多田淳之介、木村玲奈、akakilike、ルサンチカ、Monochrome Circus などの作品に出演。2020年に行ったソロダンス公演「書くとか歩くとか」の成果として、オンステージ新聞で新人ベスト2の振付家に選出される。令和3年度京都市芸術新人賞を授賞。
山本和馬さんより
（2018年12月 『きざはし』出演）
4年前の2018年に『きざはし』を踊りました。2006年初演の作品が今も踊り継がれていること、そこには作品そのものが過ごしてきた時間や関わった人の想いが積み上がっています。
お互いがお互いを見ずに、机の上と机の中という拘束された状態で踊ること。デュオという1対1の関係の中で2人になることや1人になること、探ることや感じること、そして自分を相手に預けること。デュオの関係性が机１つでこうも紡がれるのかと実感した記憶があります。
私は２期生で彼らは８期生。そんな括りは不要かもしれませんが、個人的には作品に自分を重ねながら見る贅沢を味わいたいと思います。
山本和馬/Kazuma Yamamoto
振付家・ダンサー。ヲミトルカイ主宰。阪神虎舞代表。「ダンスの天地」実行委員会代表。関西を中心に活動し、コンテンポラリーダンス以外に郷土芸能:虎舞の舞い手としても活動する。2017年より「ダンスの天地」立ち上げから参加し、現在に至るまでダンスショーケース公演の企画、インタビューや批評を通したアーティストへのアプローチを「ダンスの自明性を問ふ」と題して行っている。
中間アヤカさんより
（2018年12月 『きざはし』出演）
私がきざはしに立っていたのは、今から4年前のことだ。どんなふうにそこに立ちたいのか、どんなふうにそこで踊りたいのか、というダンサーとしての欲望を一筋縄では絶対に叶えさせてくれない振付の強度に怯えた。踊り場の設定である。机の上に立つ者、机を下から支える者、私たちに与えられる舞台は絶対に1人では踊りきることのできない場。その仕組みを存分に怖がって、助け合って、共に最後の景色に震えてほしい。最後に観客の顔を見つめて初めて、それまでの自分の踊りなぞたったこの一瞬のためでしかなかったのだと絶望してほしい。というのは私の物語で、また新たな物語がこの作品を通して生まれることをただ楽しみにしている。
中間アヤカ/Ayaka Nakama
1992年別府生まれ、神戸在住。ダンサー。英国ランベール・スクールを卒業後、文化庁・NPO法人DANCE BOX主催「国内ダンス留学＠神戸」1期に奨学生として参加。近年では黒沢美香、contact Gonzo、チェルフィッチュ等の作品に出演する傍ら、自身の作品制作も行う。2019年にArtTheater dB Kobeにて初演した中間アヤカ＆コレオグラフィ『フリーウェイ・ダンス』は、TPAM国際舞台芸術ミーティングin横浜、KYOTO EXPERIMENT、クンステン・フェスティバル・デザール、ベルリン芸術祭、ポンピドゥ・センター等で再演を重ねる。誰かや何かに振り付けられる身体にこだわりを持ち、ダンスとしか呼ぶことのできない現象を追い求めている。2018〜2020年度DANCE BOXアソシエイト・アーティスト。2022年度よりセゾン文化財団セゾン・フェローⅠ。
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