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#2 山崎広太×武井琴×山野邉明香

NEWCOMER SHOWCASE #2 山崎広太作品

9月9日の夕方、クリエーション終わりにお話を伺いました。

ワークショップの様子

ー今振り移している何パターンもの“柔らかい振り“は元々どういう動きですか?

山崎:昔から“浮遊感のある動き”がずっと自分のカラダの中にあって、どういったところからこの浮遊感がきているんだという思いがありました。面倒くさくなるだろうけど、例えば、ドゥルーズ=ガタリの「分子上の生成変化」っていう言葉がありまして、やっぱり水蒸気とかをイメージしたムーブメントに近いと思うのです。基本的に自分はブラックホールとかいろんなものをどういう風に取り込むことが可能であるか、ということを考えているので、そういうようなムーブメントを作り出そう、もしくは、そういうことをイメージしながらやっていますけど、でも実際のところ人間のカラダっていうのは、水蒸気化(バラバラになる)っていうものは出来ないけれども、まあ・・・そういうことですね。それで色んなものを結び付けようといった中には、アメリカのイヴォンヌ・レイナーがノーマニフェストということで、色んなものを否定したことによってポストモダンというのが出来上がったんですよね。ただ、僕自身はNOじゃなくてYES、全てが含まれるっていうことにおいて、そこで「暗黒」っていうようなことを考えていて、その色んなYESの中を分子的に、こう…浸透していくムーブメントとしてのイメージはあるんです。

ー前回の「踊りに行くぜ‼Ⅱvol.6」で神戸でも発表された作品「暗黒計画1~足の甲を乾いている光にさらす~」の中でのテキストでもそのようなことありましたよね。「暗黒はすべてを肯定する」。すごく印象的でした。といっても、イメージの世界をカラダでやるっていうことは、実際に水蒸気にはなれないし、分散もできないですよね。そういう場合のカラダの使い方、いわゆるテクニックという意味で、どこが一番重要だと思いますか?

山崎:まず基本的には「ジョイントは柔らかい」ってことと、「カラダが色んなディレクションに向かう」っていう感じと、それとやっぱり「カラダがどこかに拡張していく」、そういうようなイメージ。だからつまり拡張しようとすればするほど固くなりますが、逆にそれを柔らかい状態の中でいかに出来るかって感じですかね。

ーそれは舞踏に近いってことですか?

山崎:そうですよね。今は結構モダンダンスっぽい感じのムーブメントになってますけれど、理想としたら、もうちょっとゆっくりで、幻想のようでどこに行くのか ふらついているようなムーブメントになるといいのかな。たとえば土方(巽)さんが最期の時に『衰弱体』っていうカラダの方向を言ってたんですけど、それでは無いかもしれないけれども、それに近い感じをイメージしますね。もうどこに行くか分からないような フラフラしているような状態って感じですかね。

ーそのテクニックというか、動きを出すために、「観察」と「技術」と「動きの読み取り方・解釈の仕方」、すごく細かいフィルターで見ないといけないですよね。

山崎:やる当初は一人ひとりに振付ようとしたのですが13人もいるので、今は2人ずつもしくは3人で、それぞれのグループで確認しつつやっています。けれども、おそらくパフォーマーにそれぞれのイメージで作らした方が良いかもしれないですね、自分が一方的に与えるよりは。ここはこうだからもうちょっとこうした方がいいのかって徐々に作っていった方がよかったのかなってちょっと後悔しています。ただ今3日目でムーブメントの方向性に関して停滞しちゃった感じです。まあでも気分を変えてやれば大丈夫なんじゃないですか?笑

ーやっている方としてはどうですか?お二人はこれもっと習得したいです、っていうのはありますか。

山野邉:うーん。広太さんには、元々“浮遊感”っていうのがあったってことですか?

山崎:そうですね。最初18歳の時に笠井(叡)さんのところで、延々とただ浮遊していたんですよ。その時初めて笠井さんに「いいねえ」って言われたんだよね。「ああそうなんだ~!」みたいな感じ!しかも僕、指揮者をやっていたからこう(手が)柔らかいんだよね。つまり舞踏を始めた時から既に浮遊してましたね、僕は。

ーじゃあもっと遡ったら指揮者ってことなんですね。

山崎:中学は合唱クラブ、高校は吹奏楽で指揮者をやっていました。

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ー指揮者が浮遊の原点ってことですか?

山崎:浮遊っていうかわかんないですけど・・・始めた当初からありました。(笑)

山野邉:フワフワしてるけど、軸はしっかりしないと出来ないのかなと思うのですが、そうでもないですか?

山崎:まあアレキサンダー・テクニックじゃないですけど、軸が出来ていた方が、いろいろなディレクションはやりやすいですよね。ジョイントは緩やかにしていて。で、なんかムーブメントを起こしたときには絶対軸に戻るっていうようなことがあった方が良いですよね。ところで、今回のようなクリエーションをやっていく中で、それぞれにタスクを書かせてそれを交換して、それで他人のタスクを自分が解釈して、それをムーブメントで作っていくっていうのはすごく面白いですね。可能性がすごくあります。

ーお互いのタスクのシャッフルやその後の組み合わせも偶然でやっているにも関わらず、関係性が出てくるのが不思議ですね。でも、後日同じことをやってみるとなくなっていたり…。

山崎:他人によって自分が動かされるムーブメントの方がもしかしたら新しいことができるかもれない。つまり私という主体がない状態で他人をコピーする...で、このムーブメントとこっちのムーブメントを繋ぎ合わせていった方が良いのかな…?自分で作ろうとしたらやはり重くなるから。尚且つそれぞれに振りを与える時間もあんまりないから、それぞれに作らしたほうがいいのかなと思っています。僕にとってパブリックだったりとか、地とカラダの関係性ということにすごく興味があります。自分自身がダンスを始めた当初、笠井さんのところに行っている頃は、若いから(カラダを)動かしたくて動かしたくてしょうがなかったんです、電車の中とかでも。その衝動を解消する方法として、内側では踊っているんだけど、外では「電車に乗る」という自分のスタイルがあって。今度それを街でただwaitingするだけ、つまり内側はすごく激動しているけれど、普通に街では立っている。そういう時にある種タスクを持って、誰も分からない【無名のカラダ】という立ち姿を見ていると、すごく美しいですよ。このことを発展した状態でパブリック/街とカラダってどういう風な関係が出来るのか。その案として、オノ・ヨーコさんの『グレープフルーツジュース』が基になっていて、架空のものをその街にイマジネーションで与えるカラダの方向性って何なのか ということもパブリックでやっています。だから一日のスケジュールがテクニック、クリエーション、コンポジション、実験、野外でのアクティビティー。すごくバラエティで楽しいですよね(笑)普通だったら自分の作品では与えるだけで、そんなアクティビティってしないじゃないですか。だからそれが出来ているのかすごく素晴らしいです。つまり言いたいのは、ダンスってもっと広いものだから、僕にとってコンテンポラリーダンスっていうのは、もっと人間の生態っていうか、未来における生態、どういうことをしたらもっと人々がそんなにお金がなくても豊かになるか、生態としてどうしたらもっと楽しいことが出来るのか。そういうことを考えながら取り組む方が未来のコンテンポラリーダンスのような気がするんですよね。もっとパブリックに浸透したりとか そういう意味において。普通だったら観客をいっぱい呼ぶということだろうけど、そういうことではなくて、パブリック的にダンスってもっと広いものだ、ということを一般の人に知ってもらうことが重要でないかと思うんですよね。

ワークショップの様子

武井:今回オノ・ヨーコさんの『グレープフルーツジュース』を読ませてもらったんですけれども、例えば広太さんが劇場をミュージアムにするっていう内容をくださって、ダンス以外のいろんなところから、それをダンスで表現してみたらどうだろうってことがすごく印象的でした。それは日々、広太さんが生きている中で出会ったものにアンテナを張っているというか、これをダンスにもってきたら面白いんじゃないか、ってことを常に考えていらっしゃるということですよね。

山崎:大学で教える時は、街とか色んな所からダンスへの関係性っていうものを考えながら教えなくてはいけないので、そういうことも必然的に思いつきますよね。

武井:例えばタスクを実際自分たちで考えて、交換してやってみる、という風に自分は発想できない。でもそれをしたときに、それぞれやっている人らしさがすごく出ていて、それが凄く不思議な体験で、面白いなと思いました。5期生の普通に踊っている姿とは別の見え方がそれぞれにあって、きっと言葉の解釈の仕方とか、その人の価値観だったりがそのままカラダに表れているのかなと思いました。

山崎:そうですね。それぞれがもうちょっと独立して突出するといい感じになりますね。

ー今日でクリエーション3日目ですが、お二人はなにか悩みはありますか?

山野邉:振りを覚えるのが早い人や演出的な視点を持っている人、それぞれ違ったペースを持った人たちと同時にやることで自分の現状が良く分かるし、大変だなと思ったり、踊り方も自分の中で種類を持っていないので、思い込みが出てきたりとか。でも、他の人の言葉を踊るというのは、とても解放された感じがしています。自分で言葉を書いて、それを自分でやるとなにも刺激が無く内にこもってしまいますが、外から違うものが入ってきた方が気持ちは楽だし、動きも自由になる、自我がすぐ消えてくれる。失敗しても恥ずかしくないっていうか。自分のペースで一つひとつ獲得できるものをちゃんと掴んでいきたいと思います。

武井:今までやってきた動きというのが、輪郭があるのもが多くて、いかにこの形に当てはめていくかという作業をしてきました。今回、広太さんのムーブメントをしていて全く囲いがないなと思いました。今まで自分は振付を覚える時に、動きと動きをカッコで区切るようにして覚えていたんだということに気付かされました。でも今回はそれがもう通用しなくて。きっと浮遊するようなイメージを持つことも大事で、広太さんを見た時のイメージをそのままカラダの中に取り込むっていうことの脳みそが今の時点でないから、それを理解したとしても、カラダで表すことが出来ないという壁にぶち当たっています。動きをカラダに取り入れられたとしても、また自分の持っている質感みたいなものが、型にはまるとかカチカチとしたものなので、軸はしっかり持った状態で、輪郭なく踊っていくというのをどのようにつかんでいったらいいんだろうか、というのがあります。

山崎:基本的には今日言ったように、ディレクションを変えるってことですよね。それに慣れるといいんじゃないですかね。あとはツイストとかも必要ですよね。センターに戻るのが重要ですけど。あとはやっぱりジョイントを柔らかくするということと、胸を開いて閉じるも重要ですね。あと平面性ですね。いっぱい(笑)

ー広太さんが、ジョイントを柔らかくしたり、センターに戻ってくるっていうテクニックを身につけてきた中で一番こういうことが良かったということはありますか。

山崎:たぶん、トリシャブラウンのテクニックに一番近いんじゃないかなと思います。アレキサンダーテクニックに倣ってではないですけど・・・。あと、よく言ってるんですけど『やらないダンス』『ダンスをやろうとしないダンス』が狙いです。つまり「やるぞ!」っていうよりは「やらないですよ~」という気持ちからダンスに入るのが僕の姿勢でもあります(笑)これだ!これが一番重要ですね。

ー最後に今回の公演で「この劇場でやろうとしていること」を教えていただけますか。

山崎:僕の夢はNYにあるパークアーモニーみたいな超でかいスペースで50人ぐらいでやることです。「どんどん複合的にやる」っていうのが基本的にコンセプトなんですね。例えば、ステージ上でバイオレンス的なムーブメントをやっていたら、ある人は鍵を探していたり、またある人はこの劇場についての説明をしていたり、一方で舞踏をやっていたり…とにかく色んな要素が散りばめられた状況の中で作るというのが一つのコンセプトです。あと、パブリックでやる時は内っていうものを外に提示する、逆に劇場の場合は外っていうものをいかに劇場に取り込むっていうことがコンセプトなんです。今それをみんなに考えてもらっています。まだ、最終的にどうなるか分からないですね。(笑)

ーどんな作品が出来るかとても楽しみです。ありがとうございました。

以上、クリエーション最中の対談でした。このようなクリエーション、思考からどのような作品が生み出されてくるのか、ぜひ、本番にお立会いください。

#2山崎広太作品の上演は9月22日、17時00分開演です。

ご予約はこちらから。

電話:078-646-7044 メール:info@db-dancebox.org

(編集:新家綾、写真:岩本順平)

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