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#4 黒沢美香「lonely woman」

NEWCOMER / SHOWCASE#4 黒沢美香作品 「lonely woman」

クリエーション4日目となる10月29日に、参加者全員でトークバックを行いました。その中での黒沢美香さんの言葉を抜粋しました。

 「振付がある」作品と「即興」の作品の分け方、そして、転がったり走ったりする自由度と点だけでやるっていう不自由さという分け方━━これらを全部等価に考えようとしているのが「lonely woman」なんです。だからもっと言うと、ダンスの経験がある人とない人を等価に考えようとしているんです。誰のカラダにもダンスがある。じゃあ果たして、ダンスの塊であるダンサーにはどうかとなると、意外と不自由なんですよね。そこなんですが、振付もあって、音楽もあって、タイミングもあって、リズムもあってという作品を踊っている時のカラダの強度と、今回のような立っているだけの作品のカラダの強度とを同じにしたいんです。だから、元々踊る技術のあるダンサブルな人は、ああいう作品でのカラダとこういう作品でのカラダを分けずに踊ることが 今回の挑戦になると思います。

 「学ぶ」ということは、落としていく/捨てていくことでもあるんです。元々カラダに持っているものに「学ぶ」ということを追加することはなかなか出来ない。追加されると、元々のものが出て行っちゃうから。ここのバランスなんだけれども、誰が踊ったって良いみたいになっちゃうから、持っているものは大事にしないといけない。あの人じゃなきゃいけないっていう唯一の人にやっぱりなりたいわけですよ。「学び方」ですかね、栄養になるような良いところだけを取っていくのが稽古の仕方であると思います。

 「lonely woman」は実を言うと、過去にあまりダンサーとやっていないんです。ダンサーに声を掛ける時は、あの人ならなんとかなる、やっちまってくれるなっていう、そういう期待を込めて、私が思うすごく特別なダンサーにしか声掛けしないんです。90年代は、美術家や詩人、音楽家の人たちのカラダが大好きだったもので、踊ろうとしていないカラダの動き方にとても憧れていました。でも今回はダンサーであることを目標にしていたり、それを肩書きにして生きている人たちばかりで「lonely woman」をやるのは珍しい事態なんです。クリエーションの中で物を持ってきてもらったのは、踊るにはそういうカラダとの付き合い方もあるよという一例です。モノを持っても持たなくても、踊っていく中で見つけたものや燃やした火を絶対手放さない、隙間を持たさないぞ というカラダをこの舞台に持ってきてほしいです。

あと 3人が横一列で立つと、真ん中に立った人は両側の人のことを目ではなく気配で分かるけれども、端っこに立った2人はなかなか遠いものですよ。だから端っこの人に伝わるような何か威力や圧力、気配というものをより流出してあげないといけない。それは空間全体に出さなきゃいけないものだから、空間に出せば当然端に居る人にも届くと思います。ひらまっちゃん(平松み紀さん)が言っていたように、個別の箱の中で踊っているからなかなか進行しないんだなと思いました。 

 あとは舞台の乗り方ですね。客席と舞台は全然違う世界ですよ。客席から舞台に向かっていくことの怖さとトキメキっていうのがあります。また、次の人と交代する時ですが、怖い人と踊る楽しみって分かりますか?怖い人と踊りたいんですよ。やだー!来ないでー!と思っていても、虎みたいな人が迫ってくる。あるいは天使が別の夢を運んできてくれるみたいな。なんかそのくらいの次元で行ってあげないと、単なる人間の次元程度では全然面白くない。強度がないですね。そして、「どうやったら踊れるんですか?」と良く聞かれるんですが、実は私も知らないんです。踊れるかどうか分からないところからまず行くんだけど、踊らないことにはどうにもならないっていう意地とかがあるわけですよ。深く踊れる時があって、そういう時はコントロールも効かない。でも表面をバチャバチャしてしまって終わる浅い踊りの時だってあって、そういう時は悔しくて気持ち悪くて仕方ないけれど、まあまた忘れないでいようとか、そうやって留めるしかないです。「気取り」や「照れ」をどうやって押していくか。すぐ隙間風が来るからね。この隙間風が来た時に、嘘でもなんでもついて、次の道に入れるかどうかなんですけど。隙間風が来た時にいちいち正直に辞めてっていうのではない、そこの執着というか、しぶとさというか、そこを皆さんもっと持ってほしいと思います。隙間風も楽しめたらということです。

 「lonely woman」はとても怖くて、だけども楽しいものです。30分移動もせずに立ちっぱなしの制限の中で、こじんまりしないで謳歌しないとダメですよ。シンプルで大胆な構造なので、一番ちっちゃい所に立ちながら、自分が最大になる。そして3人で三重に最大になることが、それぞれのチームに起こることを願っています。

                             2016.10.29 トークバックより

以上、クリエーション最中のお言葉でした。

#4黒沢美香振付作品「lonely woman」の上演は10月31日(月) 19:00開演です。

電話:078-646-7044 メール:info@db-dancebox.org

(編集・写真 : 新家綾)


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