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Artist Interview vol.3 黒田育世


ー黒田育世さんは、ソロ活動やプロデュース公演のような振付活動よりも、ご自身のカンパニー(BATIK)での活動にフォーカスして行われていると思うのですが、そのあたりのことを聞いてみてもいいですか。

 そうですね。カンパニーって一つの文化が立ち上がるんですよね。カンパニーを継続していくことでしか立ち上がらない文化っていうのが、とても強いんだっていうことをやっていきたい。BATIKを辞めちゃうと、数少なくなるじゃないですか。カンパニーを維持して、大人数を維持することは、難易度が高いような気がするんですよね。なので、難しいほうやってみようっていうところですね。

作品ってやっぱり文化財なんですよね。美術や映画じゃないから、作品という実体をカラダで運んで、その場所にいかないと実体っていうものは立ち上がってこない。作品は、助成金いただいて、その場に沢山のお客さんに立ち会っていただいて、初演をむかえるわけだから、作品は公的な文化財であるっていうことを表明したいし、その文化財を維持するっていうのが、自分たちに課された事なのかなぁというところですね。

ー今、カンパニーのメンバーは何名くらい、いらっしゃるんですか。

 今ね、10人いるんですけど。小さい赤ちゃんがいるダンサーとか、妊娠中で、今、可動できるのが7名ですね。

ー育世さんにとってカンパニーのダンサーには、どういうダンサーであることを望みますか。

 どうですかね。どういうダンサーを望んできたんだろう。作品にカラダを投げ出せる人っていうのは非常に重要ですね。

ーBATIKダンサーに限らず、育世さんにとっていいダンサーだなって思えるのは、その投げだせる人って言えますか。

 重なる部分もありますけど、100パーセントじゃないですね。ダンサー個人として、このダンサーは素晴らしいって思う方が、すなわちBATIKのダンサーでいいかどうかはまた別の話になるので。なんていうのかな、作品に自分を投げだせるっていうことじゃない才能をもってらっしゃるダンサーもいらっしゃるので。全部重なるわけではないですが、重なる部分もあると思います。

ーちなみに男性ダンサーがいなっていうのはどういう。

 これは大変具体的です。「SIDE B」っていう作品を立ち上げて、つくってみて、そのメンバーでやるのがすごく楽しかったんで、次の作品も同じメンバーでやろうってやってみたところ「SHOKU」ができて、その「SHOKU」のツアーでいろんな地域をまわるようになりました。その後に、カンパニーメンバーのオーディションを3回行ってるのかな。けど、1回も男性は来ないんですよ。やっぱり1つ目、2つ目の作品の印象が強過ぎるのかなと。それで、4作ぐらいできていって、女性だけの作品が堆積していって。再演という行為が、うちのカンパニーではとても重要なんですね。そこに、男性が入れないというデメリットがあり。新作だったら出演できるけど、再演作品が出演できないっていうダメージがあるので。もうこのままやるしかないかなっていうところはありますね。

ーその再演が大事だっておっしゃる点についてもう少しお聞かせください。

 一つ目の質問でお答えしたこと、まんまですね。公的な資金を得て、つくった作品なくしちゃダメっていうのがあるし。やっぱり再演で、すごく学ぶことがあります。あと、これだけの力を注いだ作品を、1回では終わらせられないっていう気持ちがすごくありますね。

ー例えば今回のダンスボックスでの試みのようにカンパニーメンバーではない人と作品をもう一度再演することについては、いかがでしょうか。

 始めは、やってみないとわかんなかったんですけど、破れかぶれだったんですよ。当初そのレパートリーワークショップを考えたのも。再演をするってすごく難しい状況にありますよね。助成金がおりにくいとか、お客さんが入りにくいとか。じゃあ、こうなったらワークショップっていう形をとってでも、再演をやってみようっていう風にやってみました。はじめは、代替案とまでは言わないですけどベストなアイデアではなかった。カンパニーメンバーで再演をやっていくっていうことの方が望みでした。やってみた結果、作品ってこんなに能力をもっているんだって気づきました。作品は文化財なだけに沢山の側面があって。もちろん作品が純粋な形で、一番クオリティが高い状態で上演される側面が一つと、作品っていうものが本当に人を育てるっていうことと、他にも色んな能力を1つの作品がもっているっていうことに気づけたことですね。今はカンパニーでの再演活動を大切にしながら、同時に作品のいろんな能力を生かした活動もやっていきたいと思います。

ー先ほどお伺いした事と重複するかもしれませんが、育世さんにとって、踊りを続けていくためのなにか条件というものはどんなものでしょうか。

 基礎訓練。

ー基礎訓練…それ、のみ。

 はい。あ、のみというか、それなしではありえないです。

ーじゃあBATIKのメンバーも基礎訓練は。

 絶対。絶対です。はい。それなくしてないです。お稽古しないダンサーはだめです。

ー振付家によって色んな見解がある事で、ダンサーとテクニックの関係のように、踊ることに必要な技術について聞かせて下さい。

 そうですね。謙虚な気持ちだと思いますね。基礎訓練に毎回戻れるっていうのは、非常に謙虚な作業だし、あとね、やっぱりね、なんだろう、プリエとジャンプみたいなものですね。基礎訓練みたいなことがプリエだとして、作品でジャンプするっていう。プリエがない限り、ジャンプはできないっていうのが、カラダの構造だから。深いプリエをすれば、いっぱい飛べるっていう。謙虚になればなるほど、野蛮にもなれるし。謙虚になればなるほど、大胆になれるってわたしは思ってます。テクニックの上下じゃないですよね。基礎に戻る謙虚さがあるかどうかだと思う。

ー初心にいつでも還ることができる。

 自分のできなさに毎回気づく勇気がもてるかっていうことですね。やっぱりバーレッスンは、できないところを詰めていく作業だから。自分のできなさを毎日気づき、自分が“何ができるようになったか”っていう前進を認めてあげる時間です。いきなり大胆な世界での自分の発見ではなくて、とてもミクロなところでの、成長や弱点を見つめる、精査していくというか。すごく重要なことだと思うし。やっぱり怖がってないといけないと思いますね、人前に立つことを。

ー作品をつくるそのプロセスっていうのは、どのようなものでしょうか。これが見せたいということよりも、ダンサーのカラダが媒介となって作品を立ち上がらせようとされるのでしょうか?

 2パターンあって。ダンサーに宿題を出すパターンがあります。私が作品の題材の辞書をつくるんですけど、ノート10冊ぶんくらいの辞書をつくります。そのなかで、難問ですよね、それに私が答えきれなかったものが、いくつか出てくるんですよね。20問くらいかな。割と自分でサクサクって、すとんと答えたものは特に宿題にしません。もの凄く引っかかってしまったものを抽出して、20問くらいダンサーに歌でもいいし、絵でも工作でもいいし、もちろん踊りでも、芝居でもいい、なんでもいい、なんでもいいからとにかく形にしてくださいっていう宿題をだして、それらの解答を私がコラージュしていくってやり方が1つあります。

ーあともう一つのパターンはいかがでしょうか。

 あともう1つは、私が白昼夢じゃないですけども、パラパラパラパラッて絵が全部みえてしまって、もうやらなきゃいけないみたいな。例えば、『おたる鳥をよぶ準備』のプロセスは前者の方法でつくったんですが、この作品もやはり、ある日、引っ張られるような感じで「死ぬ準備の踊りをつくりなさい」っていうメッセージを受けてつくりました。なので2パターンが混ざるケースもありますが、あんまり定まってはいないけど、おおよそ2パターンにわかれるかな、っていう。

で、「何かを見せたい」ことは何もないんですよ。だから、こういう引っ張られるようなことがなければ動かないですね。これがジャンヌ・ダルクみたいに、ある日突然聞こえなくなったら、私やめるんだと思うんです、つくることは。再演活動はやるかもしれませんが。今のところまだ聞こえるというか、引っ張ってもらえるから、新作の活動ができるけど。ただ、お客さんにお見せする時に、今、なぜこの作品をこれだけ多くの方を巻き込んでお見せしなければいけないのかという問いは続けます、絶対に。なるほど!っていう言葉というか、その答えが見つかるのが、大抵が本番の2週間前なんですよね。お客さんにこう見せたいっていうことが特に定まっていない以上、そこの問いをやめてしまうと私ほんとにただの無責任な、ただおしっこ垂れ流してるだけみたいになっちゃうので。きちんとトイレでしましょうみたいな(笑)、ということだと思います。何が見せたいっていうのが特にないっていうのは、逆方向から考えると、お客さんの為だけにやってる訳じゃないっていう。過去どうにもならなかった人に向けても、未来どうにもならない人に向けても、もちろん目の前にいらっしゃるお客さんに向けても、何もできないですけど、踊ることだけはできますから。プラス、ひとの為だけに踊ってるわけじゃないっていうか。植物でもあるかもしれないし、なんか全部の為に。為にっていうか、せめて踊りたい、踊ることだけはできるっていう。だから、どう見えたいってことよりも、そういう気持ちが覆い被さっているのだと思います。

(聞き手:横堀ふみ、写真:岩本順平)

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