top of page

Artist Interview vol.2 山崎広太

ー広太さんが現在、重点的に取り組んでおられることは何でしょうか?

 僕は経歴的にも舞踏から始めて、それからバレエに取り組んだり、まったく逆なことを同時にやってきているのですが、現在も、現実的に、ニューヨークでの新作は暗黒と舞踏に焦点を合わせた作品で、東京ではバレエ団からの振付依頼を頂いています。そしてこのダンスボックスでのクリエーションは、この二つのことを考える上でとてもいいタイミングだと思っています。ずっと舞踏とバレエの共通項って、何だろうと探ってきたところがあります。舞踏と言っても、僕が影響を受けている土方巽さんや笠井叡さんの舞踏ではなく僕自身の舞踏なんですけど。舞踏は中腰で歪んでいく身体、それは、バレエやモダンダンスのように空間にフォルムを残すようなカラダの在り方とはまた全然違っていて。それらの共通項を発見することは色々な矛盾を孕んでいると思いますが、探っています。でもダンスの基本はステップ、そのステップに何か秘められた可能性があるような気がしてならないのです。それを体系化できるといいですけどね

ーアメリカのダンサーとご一緒されることが、ここずっと多いと思うのですが、舞踏を経験されてないダンサーが多いですよね。そのあたりいかがでしょうか。

 多いですね。ただ、内側から発しようとするダンサーは、日本人にしろ、アメリカ人にしろ問題ないです。ただ、自分はアフリカでのプロジェクトを行った時以来、アフリカンダンスが身体に入り込んでいることもあって、やっぱり土着的な方向に向かって行く。アフリカンの土着的な方向からインスパイアされた自分なりの舞踏っていうのを構築しようとしているのかもしれないです。

ー山崎広太さんが、作品をつくる動機になるものはどういうものでしょうか?

 基本的には、どういう風な作品をつくるのかといったテーマとかコンセプトが一番ですね。今までの経験の中からいうと、4・5年前の作品だと、カラダがみせる空気の彫刻だったり。谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」をテーマにした、アフリカ人の土着的な黒い身体性が闇の中に現出する闇夜だったりとか。ま〜動機はもとより、振付家として多くの経験から、作品が少しずつ積み重なり深化していくことが目的ではないかと思います。

ーでは、毎回、コンセプトとかテーマに合うダンサーを探してくるのでしょうか?

 そうですね。バレエだったり、ヒップホップだったりとか、全然違うバックグラウンドのダンサーを無理やり集めて行うのが自分のスタイルです。それはもう日本にいるときからずっと変わらないです。

ー最新作(「暗黒計画1 〜足の甲を乾いている光にさらす〜」(JCDN「踊りに行くぜ!! Ⅱvol.6」にて上演))もそうでしたね。あえて、同じテクニックとか、同じ身体言語をもってない人を1つの作品の中にいれる。

 そうですね。振付のダイナミズムを感じるからなんです。

ーその中で、共通性を探したりとか、同じテーマを探したりとか。

 そうですね。共通項が重要な鍵ですね。

ー今回の「国内ダンス留学@神戸」のプログラムの中で、広太さんがはじめて会うダンサーと作品制作を進める事になります。全員がはじめて会うダンサーとつくる時、どのような所を手掛かりにしてつくっていかれる感じですか。

 今、神戸に向けて、自分のメソッドを改めてずっと考え直しています。それを受講生と共有します。僕の今考えているメソッドや、その延長で作品創作に関わることで、多くの収穫が受講生にはあるんじゃないかな、と思うのです。ダンスは限りない可能性を秘めていると思います。受講生と多くのフィードバック、シェアをして、それぞれが自身の方向性を発見することが最終目標ではないかと思っています。 ダンスにおいては、ムーブメントのスタイルを完成させることも、ある評価ではあると思うのですが、カラダっていうものをもっとフラットにした状態の中で作品を考えてみたい。作品に関しては、ムーブメントが全てを吸収することは可能なのかどうかがテーマです。特に言葉ですね。例えばダンスとは違う他のジャンル。植物、デザイン、建築、政治、経済、料理などinterdisciplinary的に何か、あくまで想像ですがダンスと関係することは可能なようなイメージがあるのですが、特に言葉は難しい、それも敢えて挑戦したいです。また、先ほど言った、それぞれ自身が発見した方向性とリンクできたらもっと嬉しいです。具体的に言うと、“ステップ”がいかに色んなものを吸収できるかどうかっていうことです。もちろん上半身の動きも伴っています。で多分、ダンスにいろいろな要素を取り組むことは、結局無理でムーブメントのみの作品になることがオチかもしれないし、また喋り続ける言葉の多くのレイヤーを錯綜させ、その間に身体はすり抜けることができかもしれないし、それでひょんなことから良い解決策が見つかるかもしれません。このようにどうなるか解らないようなことを、実験的に試みるプロセスを受講生とシェアできることは、経験として、互いにとってすごく刺激的になるのではと思います。

ー“カラダをフラットにする”とは、どういう状態のことですか。

 モダンダンスだったら、カニングハム・テクニックとか、身体がいつのまにか取得している色んなテクニックあるじゃないですか。そうじゃなくって、まったく普通のカラダにした状態から、今何ができるのかなっていうことです。そこから考えるともっと違った作品を提示できるのではないかと思っています。

ーその身体がおこなうステップにさまざまな要素を入れていくようなことでしょうか?

 つまり、自分のメソッドの中に、日常的なムーブメントだったり、普通に話している言葉だったりが、そのステップの中に組み込まれることは可能なのかどうかっていう感じです。もちろん、ステップの中に過剰なパッションのダンス、踊りがもつ本来のエナジーを現出することもしたいし、同時に、受講生にとって今ダンスっていうものをどういう風に考えているかっていうことを色んな角度から思考し意見を聞きながら、進めます。

ー少し質問を変えて、広太さんにとって一緒に仕事したくなるダンサーとはどういうダンサーですか。

 さっきも言ったけど、内側から何かを発しようとするダンサーです。発しようとすることが一番重要じゃないかと思います。自分はここにいるみたいな。それと僕は作品によってキャストを変えています。キャストは重要です。絶対、一緒に仕事することはありえないようなダンサー同士を敢えて起用するのが、僕のステイタスでもあります。余談ですが、次の新作のキャストも、すごいです。

ー今の広太さんを形づくっているものってなんだと思いますか。

 うーん。まだ形づくられていないような気がするんですけどね。1個ができたらまた次のステップに行って、そしてそれを壊して、又新たなことを試みているサイクルです。でもそろそろ絶対的な自分のスタイルというものが確立されつつあるのかもしれません。そしてそれが確立されたとしても、僕のことだから壊すのだろうと思います。それが大きなものになるかもしれないし、自分個人だけで終わるかもしれないし。解りません。

ー日本とニューヨークで活動している時に、活動の進め方や目標の設定の違いってありますか?

 ニューヨークでの活動は、2年に一回の割合で、新作を作っています。前回の作品が終わって、自ずと次のビジョンが湧いてきて、それに向けてのコンセプト、グラント申請、キャスト、劇場との交渉、リハーサルなど多くのことが同時に進行しながら作品を作ります。一方で、日本での活動は余りないので解りませんが、この前のJCDN「踊りに行くぜ!! Ⅱvol.6」や、ダンスボックスからもオファーを頂いたり、少しずつでも活動ができると嬉しいです。いずれにせよ、ダンスって一体なんなのか、ダンス自身をずっと探求しているのかもしれない。そのダンスっていうのは普段何もしないボーっといる時もダンスであるし、ランニングしている時もダンスだし。いろんなところにダンスがあるっていうことがあるということ。すべてがダンスになる感覚っていうのを、もうちょっとシェアできたらといいかなって。これがこうだからこれが絶対だ、なんてことはまだ言えないですね。

(聞き手:横堀ふみ、写真は山崎広太さん提供)

特集記事
最新記事
アーカイブ
タグから検索
まだタグはありません。
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
bottom of page