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#6 寺田みさこ×清水彩加×関中美紅

NEWCOMER / SHOWCASE#6 寺田みさこ振付作品

【NEWCOMER/SHOWCASE】6人目の振付家は、寺田みさこ氏。12月1日のクリエーション終わりに、5期生の清水彩加、関中美紅の進行で寺田みさこさんにお話しを伺いました。クリエーションの中で感じたことや疑問を二人が投げかけます。

清水:クリエーションが始まって一週間経ちましたが、私達とやってみてどうですか?

寺田:あっという間ですね。やっと皆さんの名前は覚えました(笑)

今回はこれまでのように振付をもらって踊るというのとは違って、初めて自分たちで振りを作るということをしています。普段は先に即興などの色んなワークを繰り返して、それぞれの人のカラーとかを何となく知ってから振付作業に入ることが多いですけど、今回は時間的な問題もあったので、いきなり振付から始めて、後々即興で踊ってもらったりとか、たまたまですけどいつもとは逆のパターンですることになりました。

そんな中で例えば即興で踊るときと振付作業をするときに、やっぱりこうなるよね、というような共通の癖が見えてくる人もいれば、意外性を発揮する人もいたりして面白いですね。最終的には皆さんの振付に私が手を入れたソロパートを軸に構成していくことになりそうですが、ようやくそれぞれの人の今回の課題みたいなものが見てきたように思います。

では、お二人に質問されたものをそのまま返しても良いですか?

清水:あ、はい。確かに今までの振付家の作品は、ずっと振り付けしてもらって、受身で作品をやってきたところがあって、今回結構しんどいです。自分で作って、自分のことを客観視して、変えていって…というのが私はすごく苦手で。だけど、どこかでやらなきゃいけない事だとはずっと思っていたので、やる機会を与えてくださって、すごく感謝しています。こういう風に、作り込んでいくということを今迄やったことがなかったので。

寺田:自分で作品を作ったりはしているんだよね?その時は自分は踊らないですか?

清水:踊っている時もあったんですけど、私、自分にすごく甘くて。一人で稽古とかをすると、すぐサボってしまうんですよ。人のはすごく厳しく振り付けるんですけど、自分になるとちょっと甘いというか。本番でも即興でちょっと変えてとかしていたので、自分でこうガチっと決めていくことが初体験です。

寺田:・・・分かります(笑)変えても誰にも怒られないからね。

関中:私は久々に自分で自分の振りを作るということをして、楽しいなというか…。

自分はダンサーをしたかったんですけど、こう振りを考えるというのもやっぱりたまには必要かなって、そう考えています。自分で振り付けて、自分で踊って。私だけじゃなくてこれを違う人と一緒に踊ってみたらどうなんだろうとか、なんとなく、私が作っている踊りというものが全体で動くと面白いんじゃないかと自分で思えるようになりました。振付家目線に入れているのかなともちょっと思ったり。そういう面で、今までの期間はすごくダンサー目線で居たんですけど、今はみさこさん側の目線に行きたいなというのがあって、自分はどう見られているんだろうということが、すごく気になっています。

寺田:全てのダンサーが振付をしてみなければいけないということはないですが、振付という経験をしたことがあるダンサーとそうでないダンサーは結構違うかもしれないという気はしています。それは、自分で作ることの楽しみもしんどさも両方一回味わったら、後に人の作品を踊る時、作品への踏み込み方とか振りを解釈する時の細かさというものが結構違ってくるんじゃないかな、ということです。

だから一旦なんでもいいから「作ってみる」という過程を踏むことが踊り手にとっても重要なんじゃないかな、と思っているところはあるんですよね。

清水:私がみさこさんを凄いなと思うのが、カラダの構造から説明してくれるところです。腕と肩の骨格の位置から説明してもらうと、立体的なカラダが頭の中に浮かんできて「あ、だからここで肩が上がっちゃうのか」とか、自分のカラダを見つめ直す機会になっています。私にとっては今までで一番わかりやすいです。

寺田:私自身は解剖学そのものを勉強したことはないんですけど、アレクサンダーテクニックを習っていました。カラダの中なんてどう頑張っても見えないんですけど、…もうちょっと透けててくれたらなーとかはよく思っていますけど(笑)とにかく、体つきとかは違っても例えば背骨の数とか骨盤の基本的な形とかはみんな同じで、つまり同じものを持っているわけです。その一番シンプルな機能っていうのを把握しつつ、同時にどうしたって把握しきれない筋肉の動きの複雑さというようなものに気付く、この作業は繋がっていて、シンプルなところを知れば知るほど、より複雑さも見えてくるのかなと思います。その複雑さに伴う絶対的な個人差とかに関心があるんです、一見そんな簡単に見分けがつかないかもしれないですけど…

田中:マニアですね。

寺田:そうです、身体に対してマニアックです(笑)ダンサーの個性っていうのは大事なんですけど、その個性っていうのがパッと見てすぐキャッチできるような分かりやすいキャラクターとかはもうパッでいい(笑)

それよりもなんか、目を凝らさないと気付かないかもだけど、もうどうしようもなく身体がその人でしかないみたいなところとかを見つけたいんですよね。

田中:今回“ソロ”ということで、舞台の設えなどどうするかという打ち合わせの中で、観客は積極的にダンサーの近くに寄って行っていいから、パッと出てこない個性みたいなものを見つけに来てください、というような時間になれば面白いだろうなと思っています。舐め回すように見られるかもしれないし、角度も色んなところから見てもらえた方が、持ち帰り方としてはこれまでと違う公演になるのではないかと思います。

どうでしょうか?(笑)

寺田:私にとっては、ダンサーの動きの中には見るべきことが山ほどあるんです。というか、そういう特殊な見方をしてしまうんですよね。でも多くの人がそうしているわけではないから・・・どうしたらそういう風に沢山の人達が見てくれるのかな。

田中:入口でみさこさんのお面とか渡します?(笑)

寺田:それ、いいですね。でも、そうしたら私何もやることなくなりますね(笑)

私のこの特殊視力を(笑)どうやったら人と共有できるのかを考えるのが、私の仕事ですね。これは常々自分の作品制作のときも同じで、視力の違いの擦り合わせはなかなか難しいですよ・・・。

田中:その視力の違いということで、山ほどあるダンサーの動きや身体の見るべきポイントを実際にみさこさん自身がダンサーとして稽古される時は、どのような方法でそれを確認されていますか?

鏡や撮った映像を見るという方法はありますが、おそらくそれだけではないですよね。

寺田:まずバレエの習慣でだと思いますが、鏡はかなり使います。所詮あれは平面でしかないですけれども、私は鏡をかなり有効利用できているとは思います。

田中:でも顔の向きが鏡の方向に変わってしまうのはどうしようもないですよね。

寺田:もちろん。だから絶対完全には見れません。それは諦めてます(笑)

鏡とか動画とか色々使っても、本当には自分を見ることはできないってことは前提とした上で、自分の動きを客観視するということをトレーニングによって鍛えることはできると思っています。

これもやっぱりバレエの影響かなと思いますが、私にとっては形、動きのフォルムっていうのはすごく大事な要素です。でもだからと言って、客観視というときに、それこそ鏡に映り込む形だけを捉えているのかというと決してそうではありません。

呼吸とか筋肉の状態とかは鏡に映らないですから。

田中:その形を捉えるって時に、所謂「呼吸」というところまでも形を作るものとして、普段稽古で意識されているということですよね?

寺田:うまく纏めてもらってありがとうございます(笑)簡単に言うとそういうことです。だから人の振付を踊るときも、私はまず形を捉えて、その形を自分の中に取り込んでいく時に、呼吸とか筋肉の弱さ強さみたいなものとかも全部ひっくるめての形にするということがあるのかな。

田中:今みさこさんがされている稽古を見たりお話を聞いたりすると、もっと自分の中のフィルターみたいなものをかなり細かくしないとダメなんだなって思います。本当にそれって訓練ですよね。

寺田:これは山田せつ子さんから聞いた話ですが、昔、笠井叡さん主催の天使館に通われていた頃に笠井さんが「無数の点」ということをよく言われていたそうなんです。この言葉を私なりに解釈すると、例えばバレエのタンジュとかでも、初めての人はだいたいまず出発点と到着点の2点で捉えるという大雑把さから入るのよね。だから次にそれを線として意識してもらう。線の感覚が掴めたら、今度は無限に細かい点にする。そこまでいくと、見た目の動きは凡そ線であっても、自分がそれを線と捉えるのか、無限の点と捉えるかで全く感じが変わってくるだろうと思います。

田中:面白いですね、気が遠くなりますが(笑)でも、自分だけでなく、他者の身体の見え方も変わってきそうです。

関中:確かに今、みさこさんがやっていた動きとなんか違うなと思いながら家の鏡の前で、見てやってます。なんかずーっと気になるというか。歩いているだけでも、他人の動きが気になるようになったというか・・・。

寺田:嬉しい!こちらの狙い通りですね(笑)もうだから電車とか宝庫よね。微細な動きしている人とか奇妙な動きをしている人の動きを、よくパフォーマンスに取り入れていました。 カラダを見ていく時に、細かくすると言っても自分の見やすい方向があると思います。形先行の方が捉えやすい人とか、呼吸や質感の方が捉えやすい人とか。結果的には複合的に充実していることが大事だと思うけど、入り口はどこでもいいと思います。どこに重きをおくかとか、どういう方法で満たしていくかとかも含めてその人を形作っていくことになるだろうから、絶対何が良いというのではなく色々試してみると良いと思います。

関中:では最後の質問を。

みさこさんのこの度の2週間のクリエーションの目標はありますか?

寺田:皆さんの目標がイコール私の目標っていうところがあると思います。

今回は最初から、私のやり方を通してダンサーとしてのスキルアップを図るところに焦点を当てようというのがあったので、別の言い方をすれば私の目標は、皆さんのスキルアップです。それは分かりやすいスキルアップでなくてもぜんぜん良くて、みんながこの後に取り組むべき方向が見えてくるとか、その方法が新しく見つかるとか、もっと欲が出るとかなんでも良いんです。そもそも今年のダンス留学はダンサーの育成を目論んでいるということがあるわけですが、良いダンサーが育つための絶対的な方法なんかは多分ないので、とにかく、皆さんがそれぞれに次へ進むための課題を見つけてくれたら嬉しいですね。

田中:ダンス留学で、みさこさんのようなダンサーをもっと関西から輩出したいという思いがあるのですが、そうするためにはどうしたら良いのか・・・。もちろん2週間では到底、スキルアップと言っても目に見えて出来るもの、本当に入り口になるかならないかぐらいのものかもしれないですが、5期生たちが得るものはたくさんあると思います。

寺田:そうあってほしいものです(笑)特殊視力の私に言わせれば、もう既に色々な変化が起こっているので、私自身は日々稽古を見ている中で「今までと全然違う!」という喜びを味わわせてもらっています。すごく地味な変化かもしれないけど、でもそういうことの積み重ねでしかないと思っています。

あとこれは砂連尾(理)さんから学んだことですが、どんな微小な変化でもどんだけ喜べるかっていうのは大事だと思います。地味な作業がしんどくなって投げてしまったら最後。これはもう継続しかないので、継続するためにはちょっとしたことを喜べる大らかさが有効です。あ、あと特殊視力も(笑)。

田中:微細な変化に喜べるということは、ダンスだけでなくその人の生活も豊かにしてくれますよね。そのための特殊視力、欲しい!(笑)あ、5期生のお二人に進行してもらうとかいいながら、結局喋りすぎてしまいました。

では関中さん、このインタビューを〆てください。

関中:・・・・・ありがとうございました。

電話:078-646-7044 メール:info@db-dancebox.org

(聞き手:田中幸恵 編集・撮影:新家綾)

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